弥生犬の形成
 やがて、北方系のモンゴロイドが別のイヌを連れて本州に渡来してきました。
彼らが元々住んでいた、東北アジアや朝鮮半島にいた犬は、遺伝子的に突然変異型の
遺伝形質(血液中のタンパク質の遺伝子組成)を持つことが分かっています。
現在の日本犬に多く見られる突然変異型の遺伝子が、これらの犬と非常に近く、
また韓国犬だけに見られることからも、これら北方系の犬が日本列島に入ってきたと考えられます。
日本獣医学会の学会誌に掲載されている論文の要旨を下に載せておきます。

臨床病理学:日本および東アジアでの高X赤血球保有犬の発生率(短報)

藤瀬 浩・比嘉一成・中山孝大・和田香陽子・落合秀治・田名部雄一1)
(麻布大学獣医学部病理学第二講座,1)動物資源育種学講座)
 劣性である高K(HK)赤血球の表現型を持つ犬が、
日本犬の13の系統あるいは地方犬群の中の10群に発見された。
HK犬の発生率は山陰柴犬、信州柴犬および秋田犬で26−38%であり、
その遺伝子頻度は0.513−0.612であった。
韓国の珍島犬は,HK犬の最も高い発生率を示し(42%)、
その遺伝子頻度は0.652であった。
韓国の他の2つの群もこの変異を保有していた。
HK赤血球の表現型を持つ犬は、台湾,インドネシア,モンゴル,ロシア(サハリン)の
犬群には発見されなかったが、日本および韓国に広がっていた.
J. Vet. Med. Sci. 59 (6) 495-497


 北方系のヒトの移入のあった本州では、ヒトもイヌも南方系と北方系の混血に向かいます。
そして、本州のイヌの祖犬となる、弥生犬が形成されていきます。
その後、古墳時代以後は、外国のイヌの影響を受けず、日本犬が成立していったようです。
(やがて、柴犬、紀州犬、甲斐犬、四国犬などに分岐する)

  一方、そのまま沖縄や屋久島、樺太といった離島地域で生きてきたイヌは、
それぞれ琉球犬、屋久島犬、樺太犬の祖犬となります。
また、和人に追われて北海道に渡った東北アイヌのイヌは、北海道アイヌのイヌと交わり、
北海道犬の祖犬となります。
こうした地域に残された犬は似たような遺伝形質を保っており、北海道犬の近くのルーツは
琉球犬に行きつきます。
琉球犬は、狼時代の名残をとどめ穴を掘って出産する習性を持っています。
さらにこのルーツを辿ると、台湾犬からカリマンタン島犬に行きつきます。

大阪府立弥生文化博物館にある弥生犬の模型。
名前は「海渡」というらしい。
お値段400万とか。



しかし、縄文時代と弥生時代では、大きくイヌの用途が異なる点があります。
実は、長崎県の原(はる)の辻遺跡から、たくさんのイヌの骨、
それも殺されて食べられた跡のある骨が発見されました。
弥生人は農耕生活をしており、イヌは「食用」としての存在だったようです。
むろん、狩猟用の犬もいたでしょうが、縄文期の古くからヒトと共にいた犬は、
狩猟をやめ農耕化していった弥生人にとって、最も身近な動物性タンパク質だったのです。
その他に、害獣から農地を守る為の、番犬としての使役が始まったのも、農耕をするようになったこの頃からです。

  

   

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